【社労士解説】労務監査が社労士の武器に?法改正案で注目される「会社の健康診断」の重要性
「うちの会社、労務管理に漏れはないだろうか?」「法改正に対応できているか不安だ」——。そんな企業の不安を解消し、健全な経営をサポートする手法として今改めて注目されているのが「労務監査」です。
社会保険労務士法の改正案において、労務監査を社労士の業務範囲として明確に位置づけようという動きも出ています。本記事では、労務監査とは具体的に何をするのか、導入のメリットやチェックすべきポイントについて解説します。
労務監査とは「会社の労務の健康診断」
労務監査を一言で表すと、「専門家の視点から企業の労務管理の状態を客観的にチェックし、潜在的なリスクを洗い出すプロセス」です。
多くの企業では悪気はなくても「いつの間にか独自ルールになっていた」「法改正の対応が漏れていた」というケースが多々あります。専門家が第三者の目で診断することで、自社では気づけない「異常(問題点)」を早期に発見することができます。
労務監査で浮き彫りになる「よくある問題点」

監査を行うことで、以下のような「見落としがちな法的リスク」が明確になります。
労働時間・シフト管理の不備
・変形労働時間制の形骸化: 1ヶ月単位の変形労働制を採用していても、実態として適切なシフト管理がなされていない、または就業規則にない勤務パターンで働かせているケース。
・残業代の計算ミス: 独自の計算式を使っていることで、本来含めるべき手当が漏れていたり、時給単価を不当に低く算出していたりするケース。
社会保険・雇用保険の加入漏れ
・加入タイミングのズレ: 本来加入すべきパート・アルバイトが対象外として扱われている。
・標準報酬月額の届出漏れ: 昇給などで固定給が変わった際に行う「随時改定(月変)」の手続きが漏れている。
36協定・就業規則の不備
・36協定の提出忘れや、限度時間を超える残業。
・ハラスメント防止規定など、最新の法改正内容が就業規則に反映されていない。
労務監査を導入するメリット
監査を行い、問題を早期に解決することで、企業には以下のような大きなメリットがもたらされます。
・コンプライアンスの向上: 法律を遵守することで、行政調査や労働トラブルを未然に防ぎます。
・定着率と採用力の向上: 労務環境が整うことで、従業員が安心して働けるようになり、離職率の低下に繋がります。「労務監査を受けている健全な企業」という評価は、採用時にも大きな武器になります。
・組織の「ブラックボックス化」を防ぐ: 全てのルールをオープンにすることで、従業員との不必要な対立を避け、ハラスメントの抑止にも繋がります。
まとめ:攻めの経営のための「守り」の固め方
労務監査は顧問業務のように日常的なサポートではなく、短期間で集中して自社の「現在地」を把握するものです。
・問題を可視化し、優先順位をつけて改善すること
・法改正に即した最新のルールにアップデートすること
・従業員が信頼できる組織基盤を作ること
これらを実現するための第一歩が労務監査です。今後、社労士の標準的な業務としてより身近になることが予想されますが、早めに対策を講じることで他社との差別化にも繋がります。
自社の労務環境を一度徹底的にチェックしたい、改善のロードマップを作りたいとお考えの経営者様は、ぜひ当事務所にご相談ください。確かな専門知識で、貴社の未来を守るお手伝いをいたします。

この記事の著者
福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹
創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。