代休と振替休日の違いとは?割増賃金と給与計算の注意点を社労士が解説

2026年8月20日
代休と振替休日の決定的な違いは、「休日の事前振替手続きを行っているかどうか」および「休日割増賃金の支払い義務が発生するかどうか」にあります。
振替休日は事前に所定労働日と休日を交換するため割増賃金が原則不要ですが、代休は休日労働の事実が確定した後に別の休みを与える制度であるため、休日割増賃金の清算が必須です。
人事労務担当者はこの2つの法的性質を正しく切り分け、月跨ぎや週40時間超えに伴う割増計算の漏れを防ぐ必要があります。
振替休日と代休の法的な違いとは?
事前に休日を入れ替えたか、休日に働いた後に休みを与えたかという「手続きの順序」が両者の法的な分かれ目です。 これにより、労働基準法における「休日労働」に該当するかどうかが完全に分かれます。
振替休日(事前の振替)
あらかじめ就業規則に規定を設けた上で、事前に「休日」と「労働日」を特定して入れ替える措置です。入れ替えた休日に勤務しても、その日は法的に「通常の労働日」となるため、35%以上の休日割増賃金を支払う必要はありません。ただし、振替によって同一週内の実労働時間が週の法定労働時間(原則40時間)を超過した場合は、25%以上の時間外割増賃金の支払い義務が生じます。
代休(事後の代償)
事前の振替手続きを行わず休日に労働させ、その代償として事後的に別の労働日の労働義務を免除(休日を付与)する措置です。
休日労働を行った事実そのものは消滅しないため、会社は実際に働いた休日について休日割増賃金(法定休日なら35%以上、所定休日なら時間外扱いとして25%以上)を全額支払う必要があります。後から代休を取得させた日については、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき1日分の基礎賃金を控除します。
【振替休日と代休の比較(執筆時点:2026年08月の法令に基づく)】
| 項目 |
振替休日 |
代休 |
| 事前の手続き |
必須(前日までに振替日を指定) |
不要(事後に付与) |
| 休日の扱い |
通常の労働日に変更される |
休日労働の事実は残る |
| 就業規則の根拠 |
必須 |
必須(制度として付与を義務化する場合) |
| 割増賃金(休日) |
原則不要
※振替により週40時間を超えた場合は25%以上の時間外割増が必要 |
必要
※法定休日の場合は35%以上 |
| 給与計算の基本 |
差額なし(週40時間超過分のみ加算) |
割増分(0.35等)を支給+代休日(1.0)を控除 |
厚生労働省:代休と振替休日の違い
給与計算で発生しやすい割増賃金の注意点とは?
代休時は「割増分の清算(35%分)」、振替休日時は「週40時間超の時間外割増(25%分)」の計上漏れが最も頻出するミスです。 単純に「休みを与えたから相殺されて0円」と処理すると、賃金未払い(労働基準法第37条違反)になります。
代休における給与計算の原則
休日に働いた時間分の「1.35」を支給し、後日代休を取得した日は「1.0」を控除します。結果として差額の「0.35(割増分)」が支給額として残る必要があります。代休を取得したからといって、休日労働の割増分まで控除することは違法です。
振替休日における給与計算の原則
振替休日を取得した週と出勤した週が同一であり、週の総労働時間が40時間以内に収まっていれば、追加の賃金支払いは発生しません。しかし、休日の振替によって「出勤した週」の労働時間が40時間を超えた場合、超えた時間に対して25%以上の時間外割増賃金を支給しなければなりません。
就業規則の規定がないと違法になるケースとは?
就業規則に「振替休日の規定」がない状態での休日振替の命令、または「代休取得を理由とする割増賃金の不支給」は労働基準法違反となります。 会社側の勝手な解釈で運用することはできません。
振替休日は、労働者の合意または就業規則(振替休日の事由、振替手順、前日までの特定など)に明確な根拠規定がなければ適法に命じることができません。根拠がないまま休日出勤を命じ、後から「振替扱い」にした場合は実質的な「代休」とみなされ、35%の休日割増賃金の支払いを命じられるリスクがあります。また、代休制度を導入する場合も、代休付与の要件、賃金の控除ルール、取得期限などを就業規則に定めておく必要があります。
よくあるご質問
Q1. 振替休日や代休の取得が「月を跨いだ」場合、給与計算はどう処理すべきですか?
A1. 賃金支払の「当月全額払いの原則(労働基準法第24条)」に基づき、休日労働が発生した当月に一度全額(割増を含む)を支払い、翌月以降に代休を取得した時点でその日数分の賃金を控除します。
当月と翌月で賃金を相殺して支払いを保留することは法的に認められません。振替休日であっても、振替日が翌月になる場合は、休日出勤した当月に「週40時間超の割増賃金」または「休日労働分の基準賃金」を一旦精算し、翌月に相殺控除する手続きが必要となります。
Q2. 法定休日と所定休日の違いは、振休・代休の割増率に影響しますか?
A2. 大きく影響します。法定休日の代休は35%以上の割増が必要ですが、所定休日の代休は週40時間を超えた部分について25%以上の割増となります。
労働基準法で義務付けられた「週1日または4週4日」の法定休日に労働させた場合は35%以上の割増が必須です。一方、会社が任意で定めた所定休日(例:完全週休2日制における土曜と日曜のうち、法定休日ではない側)に出勤させた場合は、法定時間外労働(週40時間超)に該当する部分についてのみ25%以上の割増賃金の支払い義務が生じます。
Q3. 代休が溜まり続けて消化できない場合、買い取りや有効期限の設定は違法ですか?
A3. 代休に有効期限を設けること自体は違法ではありませんが、未消化分の労働に対する賃金控除を行わず、適切に清算しなければ違法となります。
代休は法定外の制度であるため、就業規則で「翌月末までに取得しない場合は失効」と定めること自体は可能です。ただし、代休が失効したからといって休日労働の対価を支払わないことはできません。休日労働当月に割増分(0.35)しか支払っていなかった場合は、代休の失効が確定した段階で残りの1.00相当額を追加支給する必要があります。
まとめ
振替休日と代休は、事前の手続き手順と割増賃金の発生パターンが明確に異なります。特に「月跨ぎの相殺禁止」や「週40時間超過による時間外割増の発生」は、勤怠管理システムや給与計算において見落とされやすい実務上の盲点です。
就業規則の記載不備や勤怠ツールの設定ミスを放置すると、将来的な未払い賃金請求や労基署からの是正勧告に発展するリスクがあります。
自社の勤怠管理ルールや就業規則が適正に運用されているか不安がある企業様は、ぜひ一度弊所までご相談ください。貴社の運用フローに合わせた規程改定から勤怠システムの適正化まで、専門の社労士が実務に即してサポートいたします。
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監修:村里男樹(社会保険労務士)
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この記事の著者
福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹
創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。