2026年最低賃金は全国平均1,176円へ|+55円の内容と中小企業が今すぐ確認すべきこと

2026年8月4日
令和8年度(2026年度)の地域別最低賃金の改定目安は、全国加重平均で前年度比55円引き上げの「1,176円(上昇率4.9%)」となりました。適用開始時期は例年通り2026年10月頃からで、都道府県ごとの地方最低賃金審議会での議論を経て正式に改定されます。過去最大の引き上げ幅となる見込みであるため、事業者は速やかに自社従業員の賃金点検と引き上げ対応を開始する必要があります。
令和8年度(2026年度)の最低賃金は全国平均でいくら上がる?
結論として、令和8年度の最低賃金は全国加重平均で「1,176円」となり、前年度から55円(4.9%)引き上げられる見込みです。
厚生労働省の「中央最低賃金審議会」が示した答申案によると、都道府県を経済状況に応じてA・B・Cの3つのランクに分けた引上げ額の目安が提示されています。今回の決定では、物価高騰への対応や継続的な賃上げ推進の観点から、各ランクとも大幅な引き上げが設定されました。
| ランク |
対象都道府県の例 |
引上げ目安額 |
| Aランク |
東京、神奈川、愛知、大阪など |
54円 |
| Bランク |
茨城、静岡、京都、兵庫、福岡など |
56円 |
| Cランク |
青森、高知、沖縄など |
56円 |
※上記数値は中央最低賃金審議会の答申に基づく指標です。(執筆時点:2026年8月)
各都道府県の地方最低賃金審議会がこの目安を参考に審議を行い、最終的な改定額を最終決定します。目安どおりに決定された場合、全ての都道府県で時給が1,000円を超えていく可能性が高まっており、経営へのインパクトは極めて大きいと言えます。
新しい最低賃金はいつから適用される?
新しい最低賃金は、2026年10月1日から10月中旬にかけて都道府県ごとに順次適用されます。
最低賃金改定の流れは、中央での目安決定後、8月中旬から下旬にかけて各都道府県で改定額が決定(答申)されます。その後、公示や異議申し立て期間を経て、例年10月1日〜10月中旬の間に発効します。
事業者は、給与の締め日や支払日に関わらず、「10月1日以降(または各都道府県の発効日以降)の労働に対する賃金」から新しい最低賃金以上の額を支払わなければなりません。締め日が月途中の場合、発効日を境に計算単価を変更するなどの実務対応が必要となるため、事前の社内システムの変更確認が不可欠です。
中小企業が最低賃金をチェックする際に見落としやすいポイントとは?
最も見落としやすいポイントは、「基本給以外の各種手当を最低賃金の対象から除外して計算していないこと」です。
最低賃金の引き上げに伴い、パートやアルバイトだけでなく、月給制の正社員であっても「時給換算額」が最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。しかし、支払っている総支給額だけで判断してしまうと、法律違反になるリスクがあります。
最低賃金の対象から「除外」しなければならない主な手当
最低賃金の適否を判断する際、以下の手当は支給額から差し引いて計算しなければなりません。
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
・時間外労働手当、休日労働手当、深夜手当(いわゆる残業代・割増賃金)
・臨時支給される賃金(結婚祝金など)
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与・ボーナスなど)
月給制従業員の時給換算式の基本
月給制の場合、以下の計算式で1時間あたりの金額を算出し、地域の最低賃金と比較します。
【計算式】
1時間あたりの金額 =(月給〔対象手当を除く〕 × 12か月)÷ 年間所定労働時間
また、パート・アルバイトの単価を引き上げた結果、勤続年数の長い正社員やベテラン社員の給与水準と近づいてしまう「賃金逆転現象・逆差現象」が発生し、社内不満に繋がる事例も増加しています。正社員も含めた賃金体系全体の見直しが必要です。
最低賃金の引上げに向けた準備を進める手順とは?
以下の3つのステップに沿って速やかに自社の適否確認と賃金改定の手続きを進めましょう。
ステップ1:全従業員の時給換算額の算出
雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイト)を問わず、全従業員の給与から「除外手当」を差し引き、時給換算額を算出します。
ステップ2:賃金改定の対象者の特定と引き上げ額のシミュレーション
新最低賃金を下回る従業員を特定し、支給額をいくら引き上げるか、企業全体で年間いくらの人件費増加になるかを試算します。同時に、近接する給与層の従業員の調整額も検討します。
ステップ3:就業規則(賃金規程)の改定と雇用契約書等の再締結
賃金改定に伴い、必要に応じて就業規則や賃金規程の改定を行い、労働基準監督署へ届出を行います。また、個別の労働条件通知書(雇用契約書)の再交付・締結を進めます。
現場での最低賃金引上げ対応事例:業務効率化と助成金活用でコスト増を乗り越えたケース
最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業でも、業務フローの改善と助成金の活用を組み合わせることで、収益性を高めつつ円滑な賃上げを達成した事例が存在します。
【事例概要】
・業種: 製造業
・従業員規模: 約20名(うちパートタイマー8名)
・地域: 地方都市(Bランク地域)
【課題】
時給改定に伴い、パートタイマー全員の給与を1時間あたり50円以上引き上げる必要が生じ、年間で約120万円の人件費増加が見込まれた。単純な賃上げでは利益率を圧迫する懸念があった。
【取組内容】
-
業務プロセスの見直しとDX導入: 紙で行っていた受発注業務をデジタル化し、無駄な転記作業や手戻りを削減。
-
助成金の活用: 「業務改善助成金」を申請し、生産性向上のための設備投資(受発注システムおよび自動梱包機の導入)を実施。
-
労働時間の削減とベースアップ: 業務効率化により残業時間が月15時間削減され、浮いたコストをパートタイマーおよび正社員の基本給引き上げ原資に充当。
【成果】
最低賃金を上回る賃上げを実現しただけでなく、社員の年間労働時間が短縮され、求人応募数が前年比で約1.5倍に増加。定着率の向上と人手不足解消という副次効果も得られた。
よくある質問(FAQ)
Q1. パートやアルバイト以外の「正社員」であっても最低賃金引き上げの影響はありますか?
はい、正社員であっても月給を時給換算した金額が最低賃金を下回っている場合は影響を受けます。
特に基本給が低めに設定されており、各種手当(通勤手当・住宅手当等)で総支給額を補っている企業の場合、除外手当を差し引いた給与が最低賃金割れを起こすケースが散見されます。正社員についても必ず時給換算でのチェックを行ってください。
Q2. 最低賃金を下回る金額で従業員と合意して契約していた場合、違法になりますか?
はい、仮に労働者本人が合意して契約を結んでいたとしても法律上無効となり、違法となります。
最低賃金法第15条により、最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約はその部分について無効とみなされ、最低賃金と同様の定めをしたものと扱われます。差額の未払い賃金を請求されるだけでなく、50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)が科される可能性もあるため、注意が必要です。
Q3. 最低賃金の引き上げに伴う人件費の負担を軽減できる政府の助成金はありますか?
はい、代表的なものとして厚生労働省の「業務改善助成金」があります。
事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、かつ設備投資等(POSレジ導入や機械の導入など)を行って生産性を向上させた中小企業・小規模事業者に対して、費用の一部が助成されます。早期の申請準備をお勧めします。
まとめ
令和8年度の最低賃金改定は、全国加重平均1,176円と過去最高の引き上げ幅となる見通しです。対応を怠ると、最低賃金法違反のリスクが生じるだけでなく、採用難や既存社員の離職にも繋がりかねません。
「自社の賃金計算が正しくできているか不安」「正社員の賃金バランスを含めた見直しを進めたい」「利用できる助成金を知りたい」とお悩みの経営者・人事労務担当者の皆様は、ぜひお気軽に当事務所の無料労務相談へご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な賃金設計と実務対応をサポートいたします。
👉 [労務相談・お問い合わせはこちら]:https://fukuoka-sr.com/adviser/
監修:村里 男樹(社会保険労務士)
資料ダウンロード
中堅企業向け
労務コンプライアンスチェックリスト
2024.12.26
企業が顧問社労士を変える際に検討すべき5つのチェックポイント
2026.06.09
労務相談顧問のご紹介
2025.09.26
この記事の著者
福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹
創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。