【社労士解説】「残業申請」の運用はどうする?勤怠クラウド導入のメリットと活用法
今回は、勤怠管理クラウドを導入する際の大きなメリットの一つである「残業申請」について詳しく解説します。
「勤怠クラウドを入れると、勝手に残業代が計算されて増えてしまうのでは?」という不安をお持ちの経営者の方も多いのではないでしょうか。実は、クラウドを活用することで、より適正で納得感のある時間管理が可能になります。
勤怠クラウド導入の本来の目的とは?
勤怠管理システム(クラウド)を導入する最大の目的は、「適正な労働時間の把握」にあります。
よくいただくご相談として、
・「打刻をしたら、そのままの時間が残業として集計されてしまう」
・「早く来すぎて朝ごはんを食べている時間や、仕事終わりの雑談時間まで残業代に含まれてしまうのが困る」 といったものがあります。
これらは、クラウドの「申請・承認機能」を正しく活用することで解決できます。
予定と実績を分ける「ロック機能」の仕組み
勤怠クラウドでは、あらかじめ「勤務予定(シフト)」を登録しておくことで、打刻時間と労働時間を切り分けて管理できます。
基本的なルール
・勤務予定: 9:00 〜 18:00
・実際の打刻: 8:00(出勤) 〜 20:00(退勤)
この場合、何も設定をしないと10時間の労働になりますが、クラウドの機能を使うと、「申請がない限り、実績を予定(9:00〜18:00)に自動で丸める(ロックする)」という運用が可能です。
従業員が「今日は急な業務で2時間残業が必要」となった場合にのみ、システム上で申請を上げ、上長が承認することで初めてそのロックが解除され、残業代として計算される仕組みです。
実際の画面で見る運用イメージ
実際の管理画面では、以下のように表示され、時間の仕分けが行われます。
・予定: 8:45 〜 17:30
・打刻: 8:17 〜 18:28
・実績: 8:45 〜 17:30(申請がない場合)
このように、早く出勤してゆっくり準備をしたり、仕事が終わったあとに少し残って交流したりする時間は、労働時間としてカウントしないように整理できます。
もちろん、休日出勤の場合も同様です。事前に「○時から○時まで仕事をします」という申請を出し、上長が承認することで、初めて労働時間として認められるようになります。
不正防止と透明性の確保
クラウド管理のもう一つのメリットは、「誰がいつ、どのように修正・承認したか」がすべて履歴として残る点です。
管理者が勝手に残業時間を削ることはできませんし、従業員の不正な申請も防げます。修正があった箇所は色が変わるなど視覚的にもわかりやすくなっており、監査等の際にも高い信頼性を持たせることができます。
まとめ:適正な運用ルールの策定が鍵

残業申請機能は、単に残業代を削るためのツールではありません。
1.滞在時間(会社にいる時間)
2.労働時間(実際に業務をしている時間)
3.残業時間(承認された時間)
これらを自動で仕分けし、給与計算へスムーズにつなげるための仕組みです。
大切なのは、システムを入れるだけでなく、「申請・承認がなければ労働時間として認めない」という社内ルールをしっかりと決め、周知することです。
勤怠管理クラウドの導入や、運用ルールの策定でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の著者
福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹
創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。