【社労士解説】最低賃金には2種類ある?算出方法と引き上げ時の必要手続きを徹底解説!
「最低賃金が過去最高額に引き上げられる」というニュースを耳にすることも多いかと思います。しかし、「具体的に何をすればいいのか」「自分の会社は本当に下回っていないか」と不安に感じる経営者・担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、社労士が最低賃金の基礎知識から、意外と知られていない2種類の最低賃金、そして引き上げ時に企業が行うべき3つの手続きについて、わかりやすく解説します。
最低賃金制度を正しく理解し、コンプライアンスを遵守した労務管理を行いたい方は、ぜひ最後までお読みください。
最低賃金制度の基本:違反した場合のペナルティは?
最低賃金とは、国が定めた「1時間あたりに支払わなければならない最低限の賃金」のことです。これは正社員だけでなく、アルバイトやパートタイマーなど、すべての労働者に適用されます。
もし最低賃金を下回っていたら?
万が一、支払っている給与が最低賃金額より低かった場合、たとえ会社と従業員が合意して契約していても、その合意は法律上無効とみなされます。会社は最低賃金額との差額を遡って支払う義務が生じます。
また、最低賃金法に違反した場合には罰金が科せられる可能性もあり、企業にとっては大きなリスクとなります。
実は2種類ある!「地域別」と「特定」最低賃金の違い
最低賃金には、大きく分けて以下の2種類が存在します。
・地域別最低賃金 各都道府県ごとに定められている最低賃金です。一般的に「最低賃金」と言われるのはこちらを指します。
・特定最低賃金 特定の産業(例:製造業の一部など)において、地域別最低賃金よりも高い金額が設定されているものです。
ポイント: 自社の業種に「特定最低賃金」が設定されている場合、地域別最低賃金よりも高い方の金額を優先して支払う必要があります。
最低賃金の対象となる賃金・ならない賃金
「基本給が最低賃金を下回っているからダメだ」と勘違いされやすいですが、実は一部の手当も最低賃金の対象に含まれます。
・対象となるもの: 基本給、諸手当(役職手当、職務手当など)
・対象とならないもの:
- 皆勤手当、通勤手当、家族手当
- 残業代(時間外、休日、深夜割増賃金)
- 賞与(ボーナス)
- 結婚手当などの臨時的な賃金
基本給だけでなく、対象となる手当を含めて時給換算し、最低賃金を上回っているかを確認しましょう。
最低賃金引き上げ時に企業が対応すべき「3つのステップ」
毎年10月頃に最低賃金が改定されます。引き上げが決まった際、企業が具体的に行うべき対応は主に以下の3つです。
① 昇給の要否確認と実施
時給制の方はもちろん、日給制や月給制の方も、1ヶ月の平均所定労働時間で割り戻して「時給単価」を算出します。この単価が新しい最低賃金を下回る場合は、必ず昇給させなければなりません。
② 雇用契約書の巻き直し
給与額が変わるため、いつから、いくらに変更になったのかを明記した雇用契約書(または労働条件通知書)を改めて交わす必要があります。後々のトラブルを防ぐためにも、書面での取り交わしは必須です。
③ 社会保険の「随時改定」への対応
社会保険に加入している従業員の固定給が変動した場合、「随時改定(月変)」に該当する可能性があります。昇給後の3ヶ月間の給与平均が、現在の標準報酬月額より2等級以上変わる場合は、社会保険料の変更手続きが必要です。
まとめ:最低賃金への対応は甘く見ず、確実な準備を

最低賃金は、行政からも厳しくチェックされる項目であり、違反には罰則も伴います。単に「時給を上げればいい」だけでなく、計算方法の確認や契約書の作成、社会保険の手続きまで一貫した対応が求められます。
「自社の給与計算が正しいか不安」「特定最低賃金に該当するか知りたい」といったお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。適切な算出方法のアドバイスから、給与計算の効率化までサポートいたします。

この記事の著者
福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹
創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。