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【社労士解説】残業代計算の「落とし穴」とは?3年遡及のリスクを防ぐ3つの注意ポイント

「残業代は基本給から計算すればいい」「住宅手当は一律支給だから計算に入れなくていい」――その思い込み、実は非常に危険です。

近年、未払い残業代に関するトラブルは増加傾向にあり、法改正によって請求権の消滅時効が延長されたことで、計算を間違えていた場合に過去3年分まで遡って支払いを命じられるリスクがあります。

本記事では、社労士が現場でよく目にする「残業代計算で間違えやすい3つのポイント」を徹底解説します。自社の計算が法的に正しいか不安な担当者様は、ぜひ最後までお読みください。

労働時間の「仕分け」が間違っていませんか?

残業代計算の第一歩は、正しい「労働時間の把握」です。しかし、そもそもタイムカードなどの勤怠データから給与計算へ移行する際の「仕分け」の段階で間違っているケースが多く見られます。

1日単位の労働時間の分類ミス

例えば「9時から23時まで働いた(休憩1時間)」という場合、単に「5時間残業した」と計算するだけでは不十分です。

・深夜労働の漏れ: 22時以降は深夜割増が必要です。この例では22時〜23時の1時間分が深夜労働として適切に分類されている必要があります。

・変形労働時間制の落とし穴: 1ヶ月単位の変形労働時間制などを採用している場合、本来必要な休日数が足りていない(例:月9日必要なのに8日しか設定されている)ことで、知らず知らずのうちに休日出勤が発生し、未払いとなっているケースがあります。

まずは、給与計算の前に「その時間はどの分類の労働なのか」という仕分けを正しく行うことが重要です。

その手当、計算から除外していませんか?「手当」の注意点

最も多い間違いの一つが、「基本給のみをベースに残業代を計算している」ケースです。

算入すべき手当と除外できる手当

残業代の計算基礎には、原則として諸手当も含める必要があります。ただし、法律で「除外してもよい」と定められている手当が限定的に存在します(家族手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当、臨時手当など)。

ここで注意が必要なのは、「名称」ではなく「実態」で判断されるという点です。

・住宅手当の例: 「住宅手当」という名称であっても、住宅費用に関わらず「全員に一律2万円支給」しているような場合は、計算基礎から除外することはできません。

・職務手当などの加算: 職務手当や役職手当などは、当然計算基礎に含めなければなりません。

これらを漏らして計算していると、残業単価が低くなり、結果として未払い残業代が発生してしまいます。

計算の基礎となる「分母」は正しく設定されていますか?

月給制の場合、残業代の単価(時給換算額)を出すための「1ヶ月平均の所定労働時間(分母)」を正しく設定する必要があります。

分母のブレが未払いを招く

「なんとなく160時間で計算している」「200時間で設定している」といった曖昧な運用は非常に危険です。

・年間カレンダーに基づく計算: 年間の休日数から算出した「1ヶ月平均の所定労働時間」を就業規則に明記し、それに基づいた計算を行うのが正しいやり方です。

・変動する分母: 毎月の稼働日数で割る方法もありますが、月によって単価が変わるため管理が複雑になります。

この「分母」が実態より大きく設定されていると、残業単価が本来より低くなり、未払いが発生する原因となります。

まとめ:未払い残業代トラブルを未然に防ぐために

残業代の計算ミスは、会社に悪意(故意)があったかどうかに関わらず、事実として未払いがあれば支払いの義務が生じます。

不適切な計算が発覚した場合、従業員からの不信感に繋がるだけでなく、過去3年分に遡った多額の支払いリスクを抱えることになります。

1.労働時間の正しい仕分け

2.算入手当の正しい判定

3.適切な分母の設定

この3点を軸に、今一度自社の給与計算体制を見直してみてください。

「自社の計算式が合っているか不安」「クラウドツールを使って自動化・適正化したい」という企業様は、ぜひ当事務所までご相談ください。法改正に即した安心の労務体制構築をサポートいたします。

この記事の著者

福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹

福岡社会保険労務士法人 代表社員 社会保険労務士 村里男樹

創業50年を超える歴史を持つ福岡社会保険労務士法人の代表社員。「手続きを代行するだけの社労士」ではなく、企業の成長と発展に本気で貢献する「提案型」の支援をモットーとしている。
強みは、労務相談や就業規則の見直し・作成といった基本業務に加え、勤怠・給与・タレントマネジメントなどのクラウドツール導入支援を組み合わせた総合的な人事労務の運用サポート。制度構築後の「運用」を重視し、労務環境の整備と企業発展に繋がる助成金の正しい活用にも注力している。

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