福岡社会保険労務士法人 広報◆
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近年、「労働時間の規制緩和」という言葉が、ニュースやSNSを中心に注目を集めています。とくに、高市氏の発言をきっかけとした議論を通じて、経営者や人事担当者の間では、
「残業規制は今後どうなるのか」
「36協定の考え方は変わるのか」
といった疑問や不安の声が目立つようになってきました。
しかしながら、こうした話題は制度の方向性だけが切り取られて語られることも多く、実際の労務管理や現場の運用にどのような影響があるのかまで理解できていないというケースも少なくありません。
そのため、「規制が緩和されるなら残業管理は楽になるのでは」と期待する一方で、本当に今のやり方のままで問題がないのか、不安を感じている企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、労働時間の規制が緩和された場合に企業で何が起こり得るのかについて、制度の概要だけでなく、36協定の実務運用という視点から整理していきます。
まず前提として、現在の日本では労働基準法をベースに、労働時間に関する明確なルールが定められています。
原則として、労働時間は1日8時間・週40時間までとされており、これを超えて労働させる場合には、労使で36協定を定め、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
さらに、時間外労働には上限が設けられており、原則として月45時間・年360時間を超えることはできません。
これらの規制は、長時間労働による健康被害や過労死といった問題を防ぐため、長年にわたる議論と社会的背景を踏まえて整備されてきたものです。
では、「労働時間の規制緩和」とは何を意味するのでしょうか。
一般的には、こうした残業時間の上限や運用ルールについて、見直しが検討される可能性があるという文脈で使われています。
つまり、単純に「残業が自由になる」という話ではありません。どの範囲まで、どのような条件で柔軟な運用を認めるのかが、現在まさに議論されている段階だと理解しておく必要があります。
では、労働時間の規制が緩和された場合、36協定の扱いはどのように変わるのでしょうか。
まず押さえておきたいのは、規制が緩和されたとしても、36協定そのものが不要になるわけではないと思われます。
36協定は、時間外労働や休日労働を行うための大前提となる仕組みです。仮に残業時間の上限が見直されたとしても、労使で協定を結び、どこまで残業を認めるのかを明確にする必要性は変わりません。
そのため、「規制が緩和される=残業管理が楽になる」と単純に考えてしまうと、思わぬリスクを抱えることになります。
厚生労働省:36協定とは?
一方で、労務の現場では次のようなリスクが現実的です。
規制が緩むと、最初は一時的な対応のつもりでも、「できてしまうなら、これでいいか」と、長時間労働が当たり前になるケースが少なくありません。
結果として、離職率の上昇やメンタル不調の増加につながることがあります。
労働時間が長くなるほど、労災認定やうつ病などのリスクは高まります。規制が緩和されたとしても、安全配慮義務がなくなるわけではありません。
「法律上OK」と「会社として安全か」は、まったく別の話です。
実は、労働時間規制が厳しいからトラブルになるのではなく、
・管理が曖昧
・説明不足
・ルールが現場に合っていない
こうした点が原因でトラブルになるケースがほとんどです。
規制が緩和されても、管理体制が弱い会社ほど問題は増えやすいのが実情です。
規制緩和の議論が進むと、特別条項付き36協定を前提とした働き方が増える可能性もあります。しかし、特別条項はあくまで「臨時的・特別な事情」がある場合に限って認められるものです。
それにもかかわらず、毎年のように上限近くまで残業が発生している場合、運用としては非常に危うい状態だと言えます。
規制が緩和されたからといって「使えるから使う」という発想で協定を設計してしまうと結果的に社員の疲弊や離職につながり、長期的には経営にマイナスとなることもあります。
これからの36協定で重要になるのは、上限いっぱいまで残業させるための協定ではなく、現実的に守れる協定をどう設計するかという視点です。
たとえば、繁忙期と通常期を分けて考える。部署ごとに業務量を把握したうえで協定内容を検討する、協定の内容を社員にきちんと説明するといった運用が欠かせません。
制度変更を待つのではなく、「今の36協定は実態に合っているか」「無理な前提になっていないか」を見直すことが、結果として企業リスクを下げることにつながります。
労働時間や36協定の問題は、単なる法令対応ではありません。
社員の定着率や生産性、さらには採用力にも直結する重要な経営課題です。
規制緩和の議論が進む今だからこそ「うちは今のやり方で本当に大丈夫なのか」と立ち止まって考えることが、将来のトラブルを防ぐ第一歩になります。
36協定の内容が実態と合っていない、残業が慢性化している、社員の疲れが見える、こうした状態は制度変更があった際に一気に問題化しやすくなります。
早めに現状を整理し、必要に応じて専門家の視点を取り入れることで無理のない労働時間管理と安定した経営につなげることが可能です。
「今の運用で問題ないか、一度確認してみたい」そう感じたタイミングこそが、見直しの適切な時期と言えるでしょう。
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