
2026年8月28日
社会保険の「106万円の壁」は、今後の法改正により撤廃・見直しに向けた議論が急速に進んでいます。
撤廃された場合、短時間労働者の社会保険加入条件から年収要件が外れ、企業にとっては社会保険料の会社負担増や人件費予算の再構築、契約見直しなどの対応が必須となります。
まずは自社への影響額(コスト)と対象となる従業員の規模を試算し、就業調整を行っているパート・アルバイト社員への早期周知を進めましょう。
社会保険の106万円の壁はいつ撤廃される?制度見直しの全体像
社会保険の「106万円の壁」は、厚生労働省の社会保障審議会等において撤廃および要件緩和に向けた具体的な検討が進められており、段階的に見直される公算が高まっています。※執筆時点(2026年08月)の情報です。
従来、パート・アルバイト等の短時間労働者が厚生年金・健康保険に加入する要件(いわゆる106万円の壁)には、主に以下の項目がありました。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)
・勤務期間の見込みが2か月超
・学生ではないこと
・従業員数が一定規模以上の企業(段階的に拡大中)
このうち「賃金要件(月8.8万円以上)」や「企業規模要件」を撤廃・見直すことで、短時間で働く労働者であっても「週20時間以上」働いていれば広く社会保険の対象に組み込む方針が議論されています。
企業にとっては、これまで社会保険の適用外だったパート・アルバイト層が新たに加入対象となり、会社負担分の社会保険料が大きく膨らむ可能性があります。
厚生労働省:「年収の壁」への対応
106万円の壁が撤廃されると企業にはどのような影響が出る?
106万円の壁が撤廃されると、企業には「法定福利費(社会保険料の企業負担分)の増加」と「雇用契約・就業規則の見直し」という2大影響が生じます。
具体的な影響領域は以下の通りです。
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財務面の負担増(社会保険料の折半負担) 健康保険料・厚生年金保険料は労使折半です。新たに加入対象となる従業員1人あたり、会社負担額が月額数万円単位で増えることになります。
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人手不足・就業調整の過渡的リスク 手取り額が減ることを懸念する従業員が、勤務時間を「週20時間未満」に抑えようとする(シフトを減らす)動きが出ると、現場の労働力が不足する恐れがあります。
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人事労務・手続き負担の増大 資格取得手続きの急増、雇用契約書の巻き直し、賃金体系や手当の見直しが必要となります。
企業は106万円の壁撤廃に向けていつからどう動くべき?
企業は制度が完全施行される前から「対象者の洗い出し」「影響額のシミュレーション」「従業員への説明」を段階的に進める必要があります。
実務上の主な対応ステップは以下の通りです。
社会保険の適用拡大に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 週20時間以上働いているパート社員は全員強制的に社会保険に入ることになりますか?
A. 原則として、法律で定められた要件(週所定労働時間20時間以上など)を満たした場合、従業員本人の希望にかかわらず適用事業所での社会保険加入は「義務」となります。加入を拒否して配偶者の扶養にとどまることはできません。
Q2. 従業員の手取りを減らさないために企業ができる支援策はありますか?
A. 政府が提供している「年収の壁・支援強化パッケージ」(キャリアアップ助成金の「社会保険適用時促進コース」など)を活用する方法があります。手当の支給や基本給の引き上げ、所定労働時間の延長等を行う企業に対して助成金が支給されるため、導入を検討するのが有効です。
厚生労働省:キャリアアップ助成金(社会保険適用時促進コース)
Q3. 学生のアルバイトも「週20時間以上」であれば106万円の壁撤廃の対象になりますか?
A. 昼間学生(大学・高校等に在学する学生)は、原則として社会保険の適用除外要件が維持される見通しです。ただし、休学中や夜間学生、通信制の学生など例外もありますので、労働条件と学生区分の個別確認が必要です。
まとめ:社会保険の適用拡大は「早期の試算と丁寧な対話」が成功のカギ
106万円の壁(年収要件)の撤廃・見直しは、短時間労働者を多く雇い入れる企業にとって経営・労務の両面で大きな転換点となります。制度施行直前に慌てて対応するのではなく、事前に自社の影響額を算出し、従業員に対して「社会保険加入による長期的なメリット(保障の拡充・将来の年金受給額増)」を丁寧に伝えるコミュニケーション設計を進めましょう。
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監修:村里男樹(社会保険労務士)