福岡社会保険労務士法人 広報◆
福岡社会保険労務士法人の広報チームです。難しくなりがちな労務・人事のテーマを、できるだけ分かりやすく、すぐに役立つ形でお届けします。法改正、勤怠・給与のDX、実務のお悩み解消など、日々の業務に役立つ情報を発信しています。

2026年 法改正 まとめを探している経営者・人事責任者の多くは、「自社にどこまで影響するのか」「いつまでに何を直せばいいのか」が見えず、不安を感じているはずです。
2026年は、106万円の壁撤廃による社会保険加入対象の拡大、130万円の壁を意識した扶養認定の見直し、カスタマーハラスメント対策義務化、高齢社員の在職老齢年金見直し、障害者法定雇用率2.7%への引き上げなど、人事労務の複数テーマが同時に動く年です。
対応を後回しにすると、未加入・手続き漏れ・従業員の離職・労務トラブルにつながりやすくなります。
本記事では制度の一覧ではなく、企業が実際にやるべき「対象者抽出」「勤怠設定」「就業規則」「説明会」まで落とし込んで解説します。
目次
まず優先順位をつけるなら、実務への影響が大きいのは次の6つです。
【第1の法改正】
2026年10月の社会保険加入対象の拡大(106万円の壁撤廃)です。
企業規模要件と賃金要件の撤廃が進み、週20時間以上働く短時間労働者は、企業規模にかかわらず加入対象になります。パート比率の高い小売、介護、医療、物流では最優先で確認すべきテーマです。
【第2の法改正】
130万円の壁に関連する健康保険の被扶養者認定変更です。
働き方を見直すパート社員が増えるため、扶養継続の認識違いが起こりやすく、本人説明を誤ると不満や退職につながります。
【第3の法改正】
カスタマーハラスメント対策義務化です。
店舗、医療、介護、運送は現場対応ルールの整備が急務です。
【第4の法改正】
2026年4月から在職老齢年金の支給停止基準額が65万円へ引き上げられます。
シニア再雇用の賃金設計に大きく影響します。
【第5の法改正】
2026年7月の障害者法定雇用率2.7%への引き上げです。
従業員37.5人超の企業では新たに対象となるケースがあります。
【第6の法改正】
女性活躍推進法の公表義務拡大です。
101名以上企業は男女間賃金差異・女性管理職比率の公表が必要になります。
現場で最も混乱しやすいのが、106万円と130万円の壁です。
よくある失敗は、人事部門が制度だけ理解していて、現場のシフト責任者が理解していないケースです。
たとえば店舗責任者が人手不足を理由に週20時間超のシフトを組んでいるのに、本人には「扶養のまま働けます」と説明してしまうと、後から保険料控除でトラブルになります。
ここで重要なのは、まず対象者抽出です。勤怠クラウドで週20時間以上のスタッフを抽出し、月次で一覧化します。次に、給与システム側で社会保険加入アラートを設定し、資格取得漏れを防ぎます。
さらに、パート社員向けに説明会や個別面談を行い、手取り額・扶養・将来の年金メリットを丁寧に伝えることが離職防止につながります。
実務では、制度対応よりも「説明不足」が退職理由になりやすい点が現場感として非常に重要です。
主な改正内容:
時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険(健康保険・厚生年金)加入要件から、賃金要件(月額88,000円以上、年収約106万円の壁)が撤廃。
加入の主な基準が「週20時間以上」の労働時間要件中心にシフト。企業規模要件(現行51人以上)も段階的に縮小・撤廃(2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月から完全撤廃予定)。
最低賃金の上昇(全国加重平均1,121円超など)を背景に、週20時間以上働けば企業規模にかかわらず加入対象となるケースが急増。
個人事業所の適用対象拡大も関連。
施行時期:
賃金要件撤廃は2026年10月予定(公布から3年以内、最低賃金状況を見て政令で決定)。企業規模要件は2027年以降段階的。
企業への影響:
パート・アルバイトの加入手続き増加、人件費(保険料負担)上昇、シフト調整・就業規則の見直しが必要。任意加入時の事業主負担支援制度も活用可能。
対応ポイント:
対象者の労働時間実態確認、加入手続き準備、従業員への説明(保険料負担増の理解促進)。チェックリスト作成をおすすめします。
主な改正内容:
被扶養者(配偶者等)の年間収入判定が「過去・現在の収入実績や見込みの総合判断」から、労働契約に基づく年間収入見込み(労働条件通知書等)を原則に変更。残業代等による超過を事前に予測しやすくなる。
カスタマーハラスメント対策義務化は、単なる注意喚起では足りません。
企業で多い失敗は、相談窓口だけ設置して、現場責任者の判断基準がないことです。
たとえば、長時間拘束、暴言、土下座要求、SNS拡散を示唆する行為が起きた際に、誰がどの段階で対応を打ち切るのか決まっていないと、従業員の疲弊と離職を招きます。
そのため就業規則やハラスメント規程には、対応フロー・相談窓口・記録ルール・顧客対応停止基準まで明記する必要があります。
実務上は、
初動対応 → 上長報告 → 記録保存 → 顧客への警告 → 出入禁止や取引停止
までの流れを文書化し、管理職研修でロールプレイまで実施すると機能しやすくなります。
ここは就業規則改定だけでなく、店舗マニュアルや医療介護の接遇ルールとも連動させると運用が安定します。
主な改正内容:
労働施策総合推進法改正により、顧客等からの暴言・過度な要求(カスハラ)に対する雇用管理上の措置が全事業主に義務化。相談体制整備、就業規則への規定追加、研修・マニュアル作成、被害者保護などが求められる。
施行時期:
2026年10月1日(すべての企業対象、規模による猶予なし)。
企業への影響:
小売・サービス業を中心に現場負担増。パワハラ・セクハラ対策と連動した全体的なハラスメント防止強化。
対応ポイント:
厚生労働省指針に基づく基本方針策定、相談窓口設置、従業員研修実施。就業規則改正と併せて進める。
高齢社員活用を進める企業では、在職老齢年金65万円への引き上げが賃金設計の見直しポイントです。
これまで年金停止を避けて報酬を抑えていた企業でも、再雇用人材の役割を広げやすくなります。営業支援、教育担当、品質管理など“高単価の再配置”がしやすくなるのが実務メリットです。
また、障害者法定雇用率2.7%では、採用だけでなく定着設計が重要です。現場配属後の業務切り出し、上司の関わり方、支援機関との連携まで設計しないと、採用しても定着しません。
主な改正内容:
民間企業で2.5% → 2.7%に引き上げ。算定基礎となる企業規模も従業員37.5人以上に拡大(常用労働者+短時間労働者×0.5で計算)。
施行時期:
2026年7月
企業への影響:
未達成時の納付金負担や企業名公表リスク増。障害者雇用の計画的推進が必要。
対応ポイント:
現在の雇用状況確認、採用・合理的配慮の体制整備、助成金活用。
2026年4月の法改正の中でも、従業員101名以上の企業にとって実務インパクトが大きいのが、女性活躍推進法の公表義務拡大です。
これまでも女性活躍推進法では、一定規模以上の企業に対して女性の活躍状況に関する情報公表が求められていました。
しかし、2026年4月1日からは対象企業と公表必須項目が拡大され、従業員101名以上300名以下の中堅企業でも、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務化されます。
企業にとっては、ちょうど「採用強化」「管理職育成」「評価制度見直し」が経営課題になりやすいタイミングです。そのため、単なる法令対応として捉えるのではなく、人材定着・採用ブランディング・管理職登用の見直しにつなげる視点が重要になります。
厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
主な改正内容:
協会けんぽの健康保険料率:都道府県ごとに改定(多くは引き下げ傾向)。
介護保険料率:全国一律で引き上げ
子ども・子育て支援金:
2026年4月から新たに徴収開始(料率0.23%程度、企業・労働者負担)。
施行時期:
健康・介護保険料は2026年3月分(4月納付)から、子ども・子育て支援金は2026年4月分から。
企業への影響:
人件費増加(特に支援金新設)。給与計算システムの更新必須。
対応ポイント:
料率表確認、保険料通知・明細の更新、従業員説明。電子申請の活用も検討。
子供家庭庁:
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkinseido
2026年の法改正は、制度単体ではなく、社会保険・就業規則・勤怠設定・再雇用・採用戦略が連動する年です。
特に、「対象者抽出がExcel管理のまま」「就業規則が3年以上未改定」「パート比率30%超」「高齢再雇用が増えている」「障害者雇用が未達」のいずれかに当てはまる企業は、社内対応だけでは漏れが出やすいタイミングです。
法改正は制度を知ることより、現場運用に落とし込めているかでリスクが大きく変わります。
2026年は社会保険・就業規則・高齢者雇用が連動する年だからこそ、自社の制度全体を見直す機会にすることが重要です。
2026年の法改正は、制度を知るだけでは十分とはいえません。
社会保険の加入対象拡大、カスタマーハラスメント対策義務化、高齢社員の再雇用設計など、実際には就業規則・勤怠給与クラウド・現場運用まで一体で見直すことが重要になります。
「自社は何から着手すべきか整理したい」
「対象者抽出や規程見直しに漏れがないか確認したい」
そのような場合は、現在の運用状況を踏まえて、優先順位から一緒に整理できます。
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